わからないじんげん

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 というところで目が覚めた。アラームを止めて、夢の内容を思い返してみる。一言でまとめると、変な夢だった。  彼女は煙草を吸わないし、僕と彼女がドイツ語を履修していたのは去年の話だ。二人とも無事に単位を取得して、今現在は第二外国語とは決別している。それに、当時の彼女はドイツ語の予習をしてこずに、授業前に僕のノートを見て対処することが多かった。  夢の中と現実とで色々なことが違っていたはずなのに、夢の中ではそのことに気付けなかった。何よりも気になったのは、夢が覚める間際の、彼女が喫煙をする場面だ。僕がよく知る子供っぽい表情で、でも見たことのない慣れた手つきで煙草に火をつけ煙を燻らせる彼女の姿は、僕をなんとなく嫌な気分にさせた。別に嫌煙家のつもりはないけど、なんというか、彼女に煙草は合わない。いや、それは僕が決めつけて良いことじゃないのかもしれないけど、でも、あくまでも僕から見ると、合わない。  かと言って、じゃあ彼女が実は本当に煙草を吸っていたということがこれから先に発覚したとして、そのことを僕はどう思うんだろう?「やめたほうがいいよ」と言うだろうか。いや、煙草を吸う自由は彼女を含めて誰にだってある。そもそも僕は「煙草吸ってるの?」と彼女に聞いてみたことすらないわけなので、もし彼女が実は喫煙をしていたとしても、それはただただ、僕が知らなかったというだけで、彼女に全く非はない。  ……あ、その「知らない」ってのが怖いのか。今考えていたのは、彼女が実は喫煙していたということが「分かったら」という前提の話だ。分かったならそれはそれでこちらも、「あ、そうだったんだね」と受け入れる体制を整えることができるけど、今は果たして彼女が喫煙をしているのかしていないのか、全く分からない。それが怖いのだ、多分。  僕がモヤモヤと色々考えているのををよそに、スマートフォンには彼女からの「おはじんげん!」というLINEが届いている。僕は「おはよう」とだけ簡単に返して、大学に行くために出かける準備をする。
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