わからないじんげん

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 二限が終わったあと、彼女と二人で学食に向かう。僕が牛丼、彼女が釜玉うどんを頼んで、奥の方のテーブルに腰掛けた。しばらく、彼女が行きたがっている旅行スポットの話をしたりした後に、僕はあの夢の話をすることにする。  「あのさ」  「ん?」  うどんをよく噛みながら、彼女がこちらを見る。  「いや、実は、昨日君の夢を見て」  「お、珍しいね」  「そうそう。それがさ、煙草吸ってる夢で」  「え? 私が?」  「うん」  何それ~、と言って、彼女はうどんをまた一口すすってから、実際に煙草を吸うジェスチャーをする。全然似合わない。どちらかというと投げキッスしているみたいだったので、思わず吹き出してしまう。  「全然似合わないね」  「ダメか」  「吸ってないよね?」  「本当に、ってこと?」  「そうそう」  「吸わないよ~」  そりゃそうだ。もちろんこれは彼女の証言に過ぎなくて、本当のところはどうなのか、ということは何も分かっていないわけだけど、僕は彼女の言葉を信じることにした。というか彼女が喫煙しているかしていないかなんて、「本当に」確かめたい場合どうすればいいんだろう。一日中見張っているぐらいしか思いつかないけど、それは無理だろう。だからつまり、彼女から聞いたことはとりあえず信じてみることが大切で、というかそれしか僕には出来ないってことだ。  「他に聞きたいことは?」  うどんを食べ終わった彼女が逆に訊ねてきたので、僕はしばらく考えてから、「今のところは無いかな」と答える。というか、こんな思ったこともなかったようなことが初めて気になったのは、あの変な夢を見たせいであって、つまり非常に珍しいケースだ。二度とないだろう、きっと。  「何か聞きたいことがあったらなんでも聞いてね。難しいのはダメだけど」  「ん、わかった。ドイツ語とかね」  バカにするな~、と言って彼女が笑うので、僕も笑う。
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