わからないじんげん

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 一人、学食で釜玉うどんを食べていると(彼女が食べていたのが美味しそうだったので僕も頼んでみた。美味しかった)、彼女と同じゼミのミユキさんに見つかる。「さん」付けをしているのは、僕が人(特に異性)との距離の取り方が苦手だからで、本当は同い年の同学年だ。長身で目がパッチリした、いわゆる「主張の強い美人」のミユキさんに対しては特に緊張するので、なかなか敬語が抜けない。  「あれ、〇〇くん。一人?」  「あ、そうなんです。彼女が起きられなかったみたいで」  「サボりか~。まあ、最近ゼミの課題で忙しいしね、疲れてるのかも」  「そうなんですか?」  「そうなのそうなの。なんも聞いてない?」  「はぁ、特には……」  言われてみれば、最近少し元気が無かった気もする。あくまでも言われてみれば、でしかなくて、それはやっぱり僕が鈍感で、人に対して関心が薄いダメ人間だということだ。辛い。  「最近彼女とはどう?」  「ん~、いや、まあまあ順調、ではあるんですけど……」  「うんうん」  ミユキさんは興味ありげに相槌を打って、僕の前の席に腰掛け、話を聞く体勢に入って、パッチリした目で「続きをどうぞ?」みたいな顔をする。 一連の流れは極めて鮮やかで、僕が「なんで座ってるんですか」とか聞く隙間はどこにもなかった。どうやら細かく話さなきゃならないやつだ。でも普通に話したら引かれそうなので、なんとか話さない方向に持っていこうと足掻いてみる。  「ミユキさんは、もうご飯食べたんですか」  「うん、軽くね」  「早いですね」  「まあまあ、私の話はいいから、彼女さんの話聞かせてよ」  ダメだった。弱いなあ僕。ん~、どうしよう。まあ、彼女に直接話すよりは、マシか。僕も誰かに聞いてもらいたい気持ちもないわけではない。聞いてきたのはミユキさんの方だから、ある程度受け止めてくれるかもしれないし。少しずつ話してみよう。  「実は最近になって、彼女のこと何にも知らなかったんだな、ってことがポツポツ浮上してて」  「ふ~ん。例えば?」
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