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目を開けると、そこには二匹のキツネがいた。
驚きで固まり横たわっているわたしの身を案じるかのように一瞥してから泥のついた頬をぺろりとなめ、
朝霧と竹藪の中へと足早に飛びながら消えていった。
わたしは動転する気持ちを落ち着かせ、頭の中を整理した。
何が起きているのか。
なぜわたしは畦道で泥だらけになって横たわっているのか。
そうそう、思い出してきた。
日課にしている早朝のお稲荷様へお揚げのお供えと手合わせをしている最中で、
不意に雷が二軒先の竹に落ちたのだ。
その雷鳴に驚いて石段から足を滑らせて畦道にゴロゴロと転げ落ちてしまったらしい。
そこから昏々と気を失っていて、
胸元から何か生暖かい蠢きによって意識を取り戻した。
……ゴソゴソ
にわかには信じがたいのだけれど、
わたしの着物から先の二匹のキツネが手品のような突飛さで現れた、
ように見えた。
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