目を開けると、そこには

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床屋を営んでいる同級生に髪を切ってもらいながら世間話をしている際に 「あんたどっか引っ越しか遠出の予定でもあるの?」 「なんで?」 「だってあんたの影が遠くに行っちゃう感じがしたからさ」 「…そんなことないよ。変な事言わないでよ」 そう言った数日後、 彼女は川に投身自殺した。 死んだ後で聞いた話だけど祖母の介護と借金の工面に疲弊しきっていたのだという。 死人に口なし。 このつぶやきだけは誰にも広まらなかった。 風向きの変わりはじめがわかる、 といえば伝わるだろうか。 自分の周りや他人が今後どう流れていくのかを具体的な日時や事柄まではわからないが、 どんな風がこの人に吹きそうか、 そんな感じがわかった気がした。 よくいう守護霊が囁いているとか、 夢占いで具体的な風景が見える、 手相で未来や一生がわかる、 オーラが見える、 占星術で運の流れを指摘できるといった類の力は私にはない。
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