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カイソンが肩を貸した。
「足をやられた。これじゃあもう飛び跳ねることはできねえ」
「えっ」
カイソンは目を見開いた。
「お前がここまで優勢だったのは、すげえ飛び跳ねる力で、黒ずくめの攻撃を全部かわしてきたからじゃん。飛び跳ねることができなくなったら…」
カイソンは顔面が蒼白になった。
「もう、お仕舞いってことか。俺たちに勝ち目はねえ」
カイソンは頭を垂れた。
「すまねえ。俺がでしゃばって助太刀なんてしようとしたばっかりに、とんでもねえことになっちまった」
カイソンは首を振った。
「いや。謝って済むことじゃねえな。俺たち、黒ずくめに殺される。二人一緒に、ここで死ぬんだ…」
「はは」
ウシワカが笑った。
「何がおかしいんだよ」
カイソンは、目に涙が溜まっている。
「はは。大丈夫だよ。俺にはまだ、奥の手がある」
「奥の手?」
ウシワカは黒ずくめに向きなおった。
「おい! そこの黒ずくめ。よく聞け」
黒ずくめは黙ったまま、三つの目をウシワカに向けた。
「物の怪か何かに取り憑かれて正気じゃねえならいざ知らず、正気ならお前は俺のことを知っているはずだ」
ウシワカは笑みを浮かべた。
「その上で言うがな。俺は尋常の人間の道を外した、ろくでもない人間だ」
(ろくでもない人間? 何を言うつもりだ)
肩を抱くカイソンがウシワカの横顔を見た。
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