プロローグ

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ーー理解はしていた。きっと君にも君が愛する彼にも残酷なことをしているだろう。 誰よりも君を愛してるけれど、君は知らなくていい。 君は俺を嫌いでなければ、幸せになれない。 そう、思っていたのにーー。 貫かれる身体の痛みより、君を手放すことがこんなにも狂おしい。 八つ裂きにされた肺を憂う。どうか最期の言霊を紡がせてほしい。 『アスター・ブラックローズ。黒き薔薇の血縁よ、その血が別つその日までーー愛する者への忠誠を』 『ブラックローズの名にかけて』 その言霊は最後まで紡げただろうか。 例え紡げなくとも--俺はシェラ、君を愛していたよ。だから君と彼の運命をどうしても救いたかった。 「--愛しいネモフィラの花。どうか何も知らずに穏やかに咲き誇り、結末を見守ってほしい」 愛する君と君が愛する者達へ、どうか精霊の加護がありますように--。
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