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ペーパードライバー
後ろからずっと車がついてくる。
追い越し禁止の一本道。こっちは慣れない運転で速度が出せず、ゆっくり走るしかできないのに、煽ってこそこないけれど、かなり車間を詰めた状態で後ろにいる。
ああ、いやだ。
俺の後ろを走るな。
俺を追ってくるな。
いやだいやだいやだ。
* * *
「?!」
「前の、車…」
「消えた…?」
「…そういえばこの辺りって、ちょっと前に死亡事故があったよな?」
「ああ。後ろの車に煽られて、ハンドル切り損ねてガードレールに突っ込んだら、打ち所が悪くてそのまま…って奴か。そういや新聞に載ってたな」
「そうそう。加害者が、制限速度四十キロなのに二十キロ以下で走ってて、イラついて煽ったらそうなったて証言してた奴」
「…そんな速度でしか走らないのに、幽霊になってまで運転してるのか?」
「どこへも行けない地縛霊になってんだろ」
* * *
運転なんかしたくない。俺はペーパードライバーだから、怖くて速度なんか出せないんだ。
なのに車から降りられない。ハンドルから手を離せない。
ああ、いやだ。
車になんか乗っていたくない。
いやだいやだいやだ。
ペーパードライバー…完
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