キラキラ、と

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弾ける照明の色。 煙草くさい、乾いた空気。そして熱い熱気。 様々な人の声。 アンプから漏れる微かな機械音。 私は今日もここで叫ぶんだ。 「....みんな、お待たせ。」 私の、私たちのステージが始まる。 今日は晴天。 私の心もまぁ、晴天。 そんな午前10時。 化粧直しを終え仕事場へ戻る。 「あ、莉杏先輩!」 私の名を呼んだ後輩が駆け寄ってくる。 入社一年目のまだ若い後輩社員だ。 いつも少し高めに結んだポニーテールが元気で明るい彼女の象徴といえるであろう。 素直に私についてきてくれる自慢の後輩だ。 「先輩って今日仕事終わり時間あります? 今夜何人かで飲みに行こうとしてるんですが、良ければご一緒しませんか?」 後輩からの飲みの誘いなんて嬉しい限りじゃない。 しかも誘いにくい”先輩”という立場の私にも声をかけてくれるなんて。 ...でも。 「うん、ごめんなさい。今日は先約があるから...。また誘ってください」 そう言うと少し残念そうに笑いながら「また誘いますね」と話してくれた。 誘ってくれた後輩の分まで、今日はがんばらなくちゃね。
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