0人が本棚に入れています
本棚に追加
弾ける照明の色。
煙草くさい、乾いた空気。そして熱い熱気。
様々な人の声。
アンプから漏れる微かな機械音。
私は今日もここで叫ぶんだ。
「....みんな、お待たせ。」
私の、私たちのステージが始まる。
今日は晴天。
私の心もまぁ、晴天。
そんな午前10時。
化粧直しを終え仕事場へ戻る。
「あ、莉杏先輩!」
私の名を呼んだ後輩が駆け寄ってくる。
入社一年目のまだ若い後輩社員だ。
いつも少し高めに結んだポニーテールが元気で明るい彼女の象徴といえるであろう。
素直に私についてきてくれる自慢の後輩だ。
「先輩って今日仕事終わり時間あります?
今夜何人かで飲みに行こうとしてるんですが、良ければご一緒しませんか?」
後輩からの飲みの誘いなんて嬉しい限りじゃない。
しかも誘いにくい”先輩”という立場の私にも声をかけてくれるなんて。
...でも。
「うん、ごめんなさい。今日は先約があるから...。また誘ってください」
そう言うと少し残念そうに笑いながら「また誘いますね」と話してくれた。
誘ってくれた後輩の分まで、今日はがんばらなくちゃね。
最初のコメントを投稿しよう!