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「そんな風に人をバカにする人に教えることはありません!」
「ハッハッハ、そう言わずによろしく頼む」
竜宮寺さんはそう言うと僕の頭をポンポンと手で叩いた。竜宮寺さんは僕よりも十センチ? いや、十五センチは背が高いので簡単に頭を触られてしまう。
「本当に協力しないよ!?」
手を除けて彼女を見る。なぜかニヤニヤしている。僕が頼まれたら断れない性格だとでも思っているのだろうか? まったく……その通りだよ。
「すまない、よろしく頼むぞ――夕貴」
僕の前に手を差し出す彼女。僕も握り返して契約成立。
正面にいる彼女の余裕の笑みを見ていると騙されてしまった感が半端じゃない。
でも、高校生活は楽しくなるかもな、なんてことを内心思ってしまっている僕がいた。
※※※
「ただいまー!」
「お帰り、おにぃ!」
ツインテールをポヨポヨ弾ませながら出迎えてくれるのは妹の藍(あい)。ビー玉のように真ん丸な大きな目がチャームポイント。
ちなみに僕がユウキで妹がアイ、アニソンの歌詞に由来するのは言うまでもないよね。
「バレなかったでしょ!」
矢継ぎ早に藍が続ける。
「うん、バレてはないと思う」
「むっふー! 当然だよ! おにぃは元々華奢で女の子みたいな体プラスきゃわいい顔してるんだから! 私がメイクを伝授した今となっては――もはや本物の女の子と言っても過言では無いね!」
「過言だよ! 褒められてるからってスルーできるものじゃ無かったよ!? ……確かに容姿はそれらしくなってると思うけどさ。でもまだまだ改良するところがあるもん」
「あるもん! きゃわいいですねぇおにぃ。食べちゃいたいです! 本当に食べちゃおうかな」
「肉親にそんなこと言われるなんて夢にも思わなかったよ」
「ユウキーちょっとこっちに来なさい」
キッチンから母さんの呼ぶ声がした。
「やぁん、やめておにぃ! くっ付いていたいのー!」
僕は腕に巻き付いている藍を振り切ってキッチンに向かう。
「お帰りなさい、高校初日はどうだった?」
「あぁ、楽しかったよ。友達もできた」
「あらあらまぁまぁ! よかったわね! 母さんはてっきり、女装がバレてでも余りの可愛さに男子に言い寄られて、勢いで押し切られたユウキは人生初の彼氏をゲットできてしまうかもって思っていたわ」
「息子を心配する親心と作家の願望が入り混じってるよ!?」
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