第1章 女装男子と嘘と彼女

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 脱衣所にある姿鏡を見るとブラウス一枚で何も穿いて無いように見える自分の姿。ここまで脱いでも男らしさが一切出てこないのは、神様が僕にしてくれた唯一の配慮かも知れない。  ブラウスのボタンを胸の高さまで外して鏡に向かって「だっちゅーの」のポーズ。うむ、我ながら色気が無い。ぺったんこにはぺったんこの需要があるとはいえ……僕は圧倒的に巨乳派だ。  理想を言うのならロリ巨乳こそ正義。異論は認めよう。  ブラウスを脱いでついに下着だけになる。スカートにトランクスを穿くのは無礼だという藍の主張により、僕は女物の下着を身に着けていた。まぁ最近は男性のブラジャーとかあるくらいだから変なことじゃない……よね?  さて、全てを脱ぎ棄てスッポンポン! 下半身の分身を見て思う。 「絶対これは女の子よりも男のが可愛いよな」  男子だったら絶対に考えることをひとしきり考えて風呂に入る。  ちなみにシャンプー、リンス、コンディショナーは藍が使っているものを共有している。これを使っていると、どこでも藍と同じ匂いがして安心するんだ。  シスコン? どんとこいです。  シャワーで泡を流し眼を開ける。  ――ぞくり。  不意に誰かに見られてる様な視線を感じた。ドアの方を振り返る。たまに藍が覗いてる時があるんだ。でも、今日はいない。  気のせいか、視線を元に戻す。  しかしその途中で気になる物が目に入った。 「窓がちょっと開いてる?」  そう。窓がほんの少しだけ開いていたんだ。僕はどうしても気になって窓の隙間の死角に潜り込んで、一気に窓を開いた。 「いやぁああああああああ!!」 「ぬわぁあああああああ!?」  僕は驚きで悲鳴しか上げられなかった。相手も同じだったらしく、ドラ○エのパ○スよろしく奇声を上げた。  外にいたのは見知ったばかりのあの人だ。 「りゅ、竜宮寺さん!? ど、どうして君がここに?」 「アッハッハ」 「いや、笑って誤魔化せると思ってるの!?」 「アッハッハ……では私はこれで」  シュビっと手を敬礼の形にして逃げようとする竜宮寺さんの背中に、僕はとっさに叫んだ。 「ちょ、ちょっと待って!」  なんでそう言ったのかは分からないけど、あの状況で何も言わない人の方が少ないと思う。  僕は着替えの世界新記録を塗り替えるが如きスピードでパジャマに着替えた。水玉模様で胸元にフリルが付いている最近のお気に入りだ!
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