第1章 女装男子と嘘と彼女

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 でも今日はバレなかったけど、こんな予測できない行動をする彼女にいつまでもバレない保証は無い。  ……よし。 「竜宮寺さん、僕は君を可愛くすると誓うよ」 「おぉ! 覗かれた上でなぜそんな思考に至るのかは私には皆目見当がつかないが、そうしてもらえると非常に助かるぞ!」  自分で覗いといてその言い草はないだろうと突っ込みたい所だけどここは我慢しよう。「でもその代わり、君にも誓って欲しいことが三つあるんだ」 「ふむ、君が一つで私は三つか……まぁ頼んでるのはこちらだ、良いだろう。内容を聞かせてくれ」 「一、もう二度とストーカー行為をしないこと」 「う、うむ。わかった」 「二、むやみに体を触ったりするのは禁止」 「なにぃ、それでは君の方からだけ触りたい放題と言うわけか! 私が受け……まぁそれもまたよし! うむ、誓おう」 「……一応言っておくけど僕から触ることだって無いからね」 「アッハッハ、照れるな照れるな」  なにか変な誤解がありそうだけどとりあえずはオッケーだ。  一番誓って欲しいのは実は次の約束。 「三、何を知っても、僕の友達でいてください」 「「――」」  二人の間に無言の時間ができる。  電気の切れかかった街灯のおかげでお互いの表情がよく見えないのは救いだった。 「くっ! なんて可愛いんだ! 夕貴、抱きしめてもよろしいな?」 「よろしくないよ!? それより、約束してくれるの?」 「あぁ、誓うまでも無いが夕貴が望むのなら約束を誓おうじゃないか! 私と夕貴は何があっても友達だ!」  手を強く握られる。真正面から言ってくれたその言葉はとても嬉しかった。  約束の二つは秘密がバレないためのもの。  そして一つはバレた時のもの。  こんな約束に本当に力があるとは思っていない。  でも、少しくらい望みがあってもいいと思うんだ。 「ありがとう竜宮寺さん、明日からは可愛くなるための特訓を始めるからね」 「おぉ、早速か! よろしく頼む」 「うん、じゃあ今日はもう遅いし、バイバイ。暗いから気をつけてね」  繋いでいた手を放して、彼女に振る。 「うむ、また明日」  そう言って彼女は夜道を駆けて帰っていった。  春の夜に浮かぶ月はまだ半月で、下弦に至るにはまだ時間がかかるようだ。月明かりに照らされながら離れて行く彼女の後姿は、なぜかとても大きく見えた。 「さて、僕も藍に色々教わっておかないと」
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