第1章 女装男子と嘘と彼女

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 しかし良く考えてみたら普通の事を言われただけだった。特に断る理由も無く、むしろ入学初日に友達ができそうで嬉しい。それもこんな美人さんだ。  立ち上がり彼女の横にいるとスルーツ系の良い匂いがした。さっぱりとしてて彼女のイメージに合っていると思う。 「こっちだ」  腕を引っ張られる、少し痛いくらい力が強い。そのまま引っ張られて、着いた所は。 「裏庭?」 「うむ」  連れてこられた場所は誰もいない学校の裏庭だった。これが西部劇だったら枯葉の一つでも飛んできそうなくらい寂しい雰囲気だ。 「……えーと、なんでここなのかな?」 「誰もいないからな」  さっくりとそんなことを言う。  これがもしも男女逆の立場だったら竜宮寺さんは変質者決定である。でも竜宮寺さんは女の子だしギリギリセーフ。いや、今は女の子同士だから何でもないのか。 「そ、そっか、じゃあここで食べようか」 「うむ」  そうは言っても、どこで食べればいいんだろう。どこか座れる場所は……あった。一つだけベンチが無造作に放置されている。  僕が座ろうとすると竜宮寺さんがハンカチをベンチの上に敷いてくれる。 「座ってくれ」 「ご、ごめんね? ありがとう。竜宮寺さんも座って」  何気ない所作がとてもジェントルメンな竜宮寺さん。ここは僕もなけなしの紳士力を発揮しなくては。  というわけで僕も自分のハンカチをベンチに敷いて彼女の座る場所を作った。  二人並んで弁当を食べる。誰かが僕達をみたらどう思うのかな? 仲の良い友達とか?  こんな時に仲の良い女の子同士はどんな会話をするのだろうか。  僕の女装は自分で見ても完璧だと思う、可愛さだけを追求したパーフェクトボディだ! 元々身長が低いこともあって女子の制服も違和感なく着れていた。  でも、この姿で女の子と一対一で話すのは初めてだ。どこからボロが出てしまうかも分からない。  仲の良い会話までは行かなくても、とりあえず無難な会話をっ! 「きょ、今日はいい天気だねー」  こ、こんな話題しかなくてごめんなさい! 心の中で土下座する。 「うむ、そうだな」  竜宮寺さんは空を見上げながら返事をした。  見上げた空には二羽の鳥が楽しそうに連れあって飛んでいる。……今のちぐはぐな僕達とは対極の存在かも。  モグモグ。  モキュモキュ。  会話のネタも尽き、無言のまま弁当を食べるだけの時間が流れる。
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