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「長所だ!」
「そう自信を持つ類の物でもないけどね!?」
「まぁそんなことより私の頼みでも聞いてくれ! というか叶えてくれ!」
「いやいやいやいや! 脈絡も何もあったもんじゃないよ! 竜宮寺さん国語の成績悪いでしょ」
「まぁ……中の下、段払いからの右直突きってところかな」
「そんな空手風の表現で答えられたの初めてッ!!」
「うむ、私も初対面の人とここまで打ち解けたのは初めてだ! ハッハッハ!」
ニヤっと歯を見せて彼女が笑う。
「……まぁ、話を聞くくらいならいいけど」
彼女の奔放さに、そう言うしか僕に選択肢は残っていなかった。
「本当か! いやぁ、実は今度お見合いをするのだが、写真での印象が悪かったみたいでな! 可愛い女の子が好きなんだそうだ! 一応お見合い自体はしてもらえることになったからどうにかしたい。家のことを考えたら私が振られるのは非常によろしく無いのでな。まいったなこりゃ、と思っていた所に君の様な可愛い子が目の前に現れたというわけさ!」
捲し立てるように話す彼女、僕が理解できたのはお見合いをするという事だけだ。
いや、でもお見合い? 竜宮寺さんが? だって僕達はまだ高校に入ったばかりの高校生だ。確かに女の子は十六歳で結婚できるけど……。
頭が混乱で悲鳴を上げていたけど、なんとか理解はできた。
「それで僕に相談したんだね」
「そういうわけだ! ん? ……僕? 僕とな」
「あ、いやっ、これは――」
驚いていたせいで一人称を直すのを忘れてしまった。
どうしよう、女の子のはずなのに自分のこと僕っていうなんてやっぱりおかしかったかな。実は直すかどうか悩んでいた所なんだけど、結局答えを出していなかったのが裏目に出た。
「君は僕ッ子なのか! 現実で目撃するのは初めてだ。いる所にはいるものだな」
彼女はウムウムと納得したように顎に手を当てる。
あっさり受け入れられてる!? まぁそれならそれで良いんだけどさ……どこまで完璧なんだ、僕の女装。
「自分の限界が全く見えないよ」
「さらに中二成分をも付加すると言うのか! 恐ろしい、恐ろしい子だよ君は!」
いやまぁ、そう言われても、男の子なんですけどね。
「しかし、だからこそ君がいいのだ!」
あぁ、誤解されたまま彼女の中での僕のイメージが着々と出来上って、評価はうなぎ登りしてしまっている。
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