SNOW・LOVE

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 ゼミが一週間休講になった。 教授が学会に出張するらしい。めいっぱいバイトを入れた。ちょっと稼いでおきたくもあった。  だが―― 「あー、もう10日も今宮に会ってねぇ……」  福島寿夫(ふくしまとしお)は駅からマンションまでの帰り道、大きな声で呟いた。  寿夫の言う今宮雪人(いまみやゆきと)は、大学のゼミが一緒な、恋人というか違うというか、微妙な関係の彼氏である。  この関係を持ち出したのは寿夫だ。  雪人があっさり認めてくれたのは意外だったが、今のところ上手くいっている。  もう半年になる。  しかし、恋人じゃないというところで妙な線引きをしてしまっているのか、そうじゃないのか、イマイチよく分からないが、雪人は自分から寿夫を誘うことがない。  たいてい、いや全部、寿夫が雪人を誘っている。 「遊びに行こうぜ」 「映画見ようぜ」 「ジャズハウス行かねぇか」 「今夜泊まりに来ねぇ」  雪人は頷くだけだ。誘えば絶対に断らない。
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