SNOW・LOVE

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 先日思い切ってマンションの合鍵を渡してみた。不思議そうな顔をする雪人に遠回しに言った。 「いや、困ったことが起きたりした時にだな、いつでも遠慮なく訪ねてきてもらえるように、な」 「困ったことって?」 「ほら、停電とか雨漏りとか風呂釜が壊れたとかよ」 「ああなるほど……。それは助かるな」 「別にそれ以外でも、いつでも来て、勝手に上がってくれてもいいんだけどな」  そうは付け加えてみたものの、本当に停電とか雨漏りとか風呂釜が壊れた時にしか来ないんじゃないか、という不安はあった。  そしてそれは的中した。 雪人は訪ねて来ないのだ。 「あー、もう俺限界だわ。逢いてぇぞぉ今宮ぁ……」  左腕の時計を見る。時間はもう深夜に近い。さすがにこんな時間に呼び出すのは気が引ける。  雪人のアパートから寿夫のマンションまで、電車を使えば40分はかかる。もうすぐ終電もなくなるだろうし。タクシーを使えば20分で来られるが、雪人もバイトをしながら学費を払う苦学生だ。タクシー代を思うとそんなわがままを言うわけにもいかない。  今週どこかでバイトを減らして雪人を誘おう。
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