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爆睡してるけど、この際それは不問にしよう。
今すぐ叩き起こして抱き締めたいのをぐっと堪え、寿夫は雪人の隣に腰を下ろした。
「ん……んんっ……」
雪人が小さく唸って目を開けた。
「あ……福島……おかえり……」
瞼を擦りながら体を起こす。寿夫は極力平静を装って答えた。
「おう、ただいま。今宮、来てたんだな」
「あ……悪い、勝手に上がりこんで……。訪ねて来たら留守だったんでどうしようかと思ったんだが、買ってきたアイスクリームが溶けそうだったんだ……」
「アイス買ってきたのかよ、そんな気ィ使うなって。俺こそ悪かったな。めいっぱいバイトでよ、言ってくれりゃもう少し早くあが……」
勢いが付いてマシンガンのように喋りそうになる寿夫を、珍しく雪人の手が遮った。
「いや……嘘だ……」
「は?」
「アイスクリームを買ってきたのは本当だが、上がりこんだのはそれが理由じゃない……」
「へ?」
雪人は組んでいた胡坐を解き、きちんと正座した。
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