69人が本棚に入れています
本棚に追加
「実は……」
言いかけて口をつぐむ。
「なんだよ、なんでも言えって。どしたなにかあったか? 停電か? 今日は雨じゃねぇから雨漏りじゃねぇよな……、じゃあついに風呂釜が……」
「違うんだ」
「うん」
「実は……今朝いつものように番組を見ていたら」
「おう、お前がいつも見てるあれか、『おはよう太陽です』だっけか、あのローカルの」
「そう……」
雪人は寿夫の部屋に泊まった朝も必ずこの番組を見る。よく喋る地元のアナウンサーが楽しいと言うのだ。
「重いニュースばかりを扱わないから好きなんだ。地域に密着した情報なんかもたくさん流れるし」
その情報を活用しているとは全く思えないのだが、寿夫は朝の番組などどうでもいいし、雪人が好きならと一緒に見ていた。
「その番組がどうした?」
「いや、番組じゃなくてテレビが……」
「テレビ?」
「ボン! って大きな音がして薄い煙が上がったなぁと思ったら、うんともすんとも言わなくなった」
「はい?」
「揺すっても叩いても、映らないんだ」
最初のコメントを投稿しよう!