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寿夫は噴き出した。
「今宮、それ壊れてるって!」
「いや今までも映らなくなる時はあったんだ。そんな時はこう横からバンッ! と叩くと映ってたんだよ」
「だって煙が出たんだろ? 大体いつ買ったんだそのテレビ」
「じいちゃんが使ってたのを貰って来たから、3、40……年前くらい……かな……?」
雪人があまりに真面目に答えるので、寿夫はついに腹を抱えて笑い出した。
「俺たちより古いじゃねぇか、そりゃ壊れもするって……。で、テレビが壊れたのと俺んちに来たのとなんの関係が……?」
雪人は俯く。
「朝はそのままバイトに出たんだが、実は今日……どうしても見たい番組があって……」
「うちにテレビを見に来たと……」
「すまないっ!」
雪人がぺこりと頭を下げる。
「いやいや、なんか困った事があったらいつでも来いって言ったのは俺だし、構わねぇけど……」
雪人がそんなに執着する番組が『おは太』以外にあるとは知らなかった。
ちょっと気になる。
「ちなみになんちゅう番組なんだよ、それ……」
雪人は上げた顔をぷいと背ける。
「聞くのか」
「聞かせろよ、テレビ貸してやったんだから」
「うー」
「俺には聞く権利があるだろ?」
「ううー」
「なんたってこのテレビは俺のもんだからな」
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