弱る君は、いつもと違くて、私を惑わせる

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放課後の日が沈んで、真っ暗な時間。 この教室に生徒は私たちしかいなくなっていた 「ねえハグ、してよ」 女同士で抱き合うなんて、 どうかしてるだろうか。 でも衰弱している彼女を甘やかしたい。 同級生と笑って、面白い話をして、 先生からも頼られてる彼女。 本当の彼女を見れている気がして、 今の彼女を私だけが知っていたい。 彼女は眠そうにして、 瞼から覗かせる瞳は一ミリもない。 「落ち着く。なにも言わなくていいから、このままにしてて」 甘い、とろけたような子供の声。 ガクッとして 彼女の全体重が感じられる。 首は前に折れて、 顔が私の胸に押し付けられている。 寝た…? 少しだけ、体を持ち上げて、 顔を覗くと目は瞑り、 長い睫毛は背景が白い肌になって 見やすくなって、 口からは微かな呼吸が聞こえてくる。 「おきて」 「もうちょい…」 顔を上げても目を開かず、 口だけ動かして最後は唇をつきだして、まるで駄々っ子。 可愛らしい顔を ぐりぐりを擦り付けてくる。 「寝ぼけてる? それとも、実は起きてる?」 いつもとは違う甘えん坊。 さっきから本当に ちっちゃい子供みたい。 ほっぺを摘まんで引っ張ってみる。 柔らかい頬は伸びて、白い。 まるでケーキのスポンジ。 食べてしまいたい。 女王様が財を独り占めするように あなたを独占してしまいたい。 なんて、駄目だよね。 だって、私はきっと人に好かれない。 そんなに認められる人じゃない。 翔も私を認めてなんかくれなくて、 一番の友人にもなれない。
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