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ACT.3 剣と弓
さぁ、勇気を振り絞って現実に還ろう。
「…あの、旅人さんですの?」
全く微動だにしない咲哉に痺れを切らせた婦人が声を掛けてくれる。咲哉は静かに、ちょっと考える間らしきものを取り、ゆっくり頷いた。物語始まって、やっと反応らしき反応を見せました。
「物静かな方ですのね。…あら?その剣、どこかで…………ああ!ちょっと!エリーヤさん!」
近くにいたお友だちのご婦人らしき人に話し掛ける。
「え?!」
多分、関わるのを躊躇っていたのだろう。仕方のないことだ。この風体ならば。
「ほら!この方の持ってらっしゃる剣!お宅の旦那さんが打ってるのと似てないかい?」
《まだ立ち向かう気力のあった戦士の剣》から《使い降るされた剣》に無惨にも改名されてしまった、この剣のことらしい。
「た、確かにうちの人の打ってるものに似てるね……。」
戸惑いはまだ隠せないらしい。確かに話し掛けにくい。出来れば関わりたくない出で立ちだ。
「……大丈夫よ、きっと。無口な方みたいだから。旦那さんに見てもらいましょうよ、ね?」
奥さん、お気遣いありがとうございます。まぁきっとデフォルト機能なのだろうが、有難いことにはかわりない。
咲哉は連れられるがままに鍛冶屋と向かった。そう遠くはない場所、と言うか目と鼻の先にあった。……《小国》ですからね。現れた場所から入り口までが異様に長かったことは忘れよう、うん、忘れよう。
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