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カラオケボックス
会社の飲み会の二次会でカラオケボックスに行った。
店員に案内されて部屋に向かうと、そこにはすでに先客がいた。
だだっ広い部屋なのに、すでにおひとり様が陣取っている。なのに店員は気にするふうもなく俺達を残して去って行った。
え? 先客がいるのにいいのかよ。部屋を間違えてるんじゃないのか? それとも相手が一人だから相部屋にしろとでも?
正直なところ、俺はあまり赤の他人との相席とかは好きじゃないし、俺以外にも嫌がる人間は少なからずいる筈だ。
そう思い、周りに訴えようとしたのだが、みんなはまるで気にしていないらしく、さっさと席についてしまった。
これでいいのかよと思っている俺を尻目に、みんな好き勝手に歌を歌い出す。そこまではまだよかったが、注文した料理を勝手に先客が食い始めた段階で、さすがに許容ができなくなった。
とはいえ、気の弱い俺は直接その人に文句が言えず、隣の同僚をつついて、先客が勝手にあれこれ食べていることを訴えた。しかし同僚の反応は…。
「は? 他の客? どこに?」
一次会で酒を飲んでいるとはいえ、正気を失うような量ではない。なのに同僚には先客が見えていないようだった。…いや、俺以外にの全員に見えていないというべきか。
何も言えなくなる俺の視線の先で、誰にも見えていない先客が、今度は勝手に選曲をし始める。
さすがに、誰も選んでいない曲が流れ出し、さらには歌声が響いたりしたら、みんなもこの異常事態に気づくだろうか。
とにもかくにも気弱な俺は、何も言えないまま、誰にも見えない先客の選んだ曲が流れ出すのを待つしかできない。
カラオケボックス…完
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