第一章 お隣さん

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築8年の3階建ての真っ白なアパート。道の両脇に満開の桜の木があってとても華やかだ。 無意識に下から2番目の一番左の空っぽの部屋をじっと見つめる。 「醤油さーん、この荷物は全て201号室の中に運んでいいんですよね?」 後ろから引越し業者のお兄さんの声がした。僕は部屋の鍵をお兄さんに渡して答える。 「すみません、お願いします」 お兄さん達はテキパキと荷物を運び出し1時間後には完了していた。 「ありがとうございます」 「荷物はこれで全部ですよね?確認をお願いしてもいいですか?」 僕は搬入された荷物の確認をしてお兄さんに代金を払った。 真っ白な部屋、新品な匂い、大量に積まれた段ボール。今日からここが僕の世界だ。 僕は荷解きをせずしばらく大の字になって天井を見つめていた。 目を開けると窓の外は夕焼けになっていて腕時計の針は17時を指していた。 せめてカーテンと布団は出そう。段ボールから必要最低限の物を出してから弁当を買うために外に出た。 アパートから徒歩5分のところにコンビニがあるのは便利だ。これでしばらく食生活には困らない。 僕は弁当コーナーで何を買おうか悩んでいた。後ろから「んー」と悩んでいる声がした。
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