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目を開けると、そこには 私の顔を覗き込む、一人の中年女の顔が有った。 「おわっ!」 目を覚ました私は、思わずビックリして声をあげた。 「な、何で!ここにいるんだ?!」 咄嗟に頭に浮かんだ疑問を口にする。 そして、 ベッドから跳ね起きようとした… のだが! 「か、体がっ!動かないっ!!」 ここは、私が住むマンションの寝室。 私の顔を覗き込んでいたのは… 妻の恵美子である。 彼女は、虚ろな目で… 私の顔を無言で覗き込んでいた。 「な、何で!ここにいるんだ?!」 私は、再び疑問を口にした! だ、だって今頃! 妻は、箱根の温泉旅館にいるはずしゃないか!! そ!それとっ! 私は寝る前に、あの強烈に眠くなる睡眠薬を飲んだはずなのだ! そ、それなのに! 何で! 今、目が覚めてしまったんだ?! と… 恵美子が、無言のまま… 動けないでいる私から顔を離した。 今… 彼女は、私が寝ているベッドの足元の方で、相変わらず無言のままで立っている。 「あっ!」 と、その時、 私は思い出した。 そ、そうだった! 私は… 昨日、恵美子がいつも飲んでいるサプリの小瓶の中身を… 全て、 あの強烈な睡眠薬と、こっそりすり替えたのだった! だから… 私がさっき睡眠薬だと思って飲んだのは、 恵美子がいつも飲んでいる錠剤サプリ! なるほど! それなら、目が覚めてしまう訳だ! そう…。 今頃、恵美子は… 私がすり替えた睡眠薬をサプリだと思い込んで大量に飲み、 昏睡状態…うまくすれば死に至っているに違いないのだ。 三ヶ月に一度… 妻と一緒に温泉旅行行っている、彼女の『友達』… あの浮気相手の男に罪を着せるよう、私は前もっていろいろと『工作』をしておいたのだ…。 そ!それなのに! 何で恵美子は今、ここにいるんだ?! 「あっ!!」 何となく… 彼女の体が、 透き通っているようにも見える…。 と… 恵美子が、ゆっくりと両手を前に突き出した。 そして… 彼女は、両手の指を まるで何かを力一杯に握って、絞め付けるかの様なジェスチャーをした。 と、その時… 私の頭の中に、ある言葉が浮かんだ…。 これは… 『エア・首絞め』…? しかし… 『ギリギリ…』 私の首が… 本当に絞まりだした! 私は… 薄れ行く意識の中で… これが、 決して『エア』ではない事を… 身を持って知った………。
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