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目を開けると、そこには
私の顔を覗き込む、一人の男の顔が有った。
「おわっ!」
目を覚ました私は、思わずビックリしてソファーから跳ね起きた!
「な、何で!ここにいるんだ?!」
咄嗟に頭に浮かんだ疑問を口にする。
「兄貴!せっかく心配してあげたってのに、そんな言い方って無いんじゃないか?!」
男が口を尖らせた。
「今日、たまたまこの近くで職場の飲み会が有ったんだよ!
で、その帰り道に兄貴が住むこのマンションの前を通り掛かったら、こんな遅い時間なのに部屋に明かりが点いてるもんだから、ちょっと気になってさ!
そしたら、玄関の鍵は開いてるし…全く!不用心が過ぎるぜ?!」
ここは、私が住むマンションの居間。
私の顔を覗き込んでいたのは、弟の義雄である。
独身の義雄は、隣町で一人暮らしをしている。
ふと、壁時計を見ると、夜中の十二時になっていた。
「そ、そうだったのか!
それは済まなかったな。いやぁ、居間でテレビを見ているうちについつい眠くなっちゃってさぁ。スマンスマン」
と、私は彼に詫びてから玄関まで行き、改めて施錠をした。
会社の帳簿チェックを終え、帰宅した私は一人で居間で深夜番組をダラダラと見ていたのだ。
で…そうこうしているうちに、急に睡魔に襲われ…いつの間にやら、本格的に眠ってしまったようだ。
ふと、テレビを見ると画面は消えていた。
義雄が消してくれたのだろう。
「兄貴!こんな所で寝てたら、風邪ひくぜ!寝るんならちゃんとベッドで寝ろよ!」
と、義雄は、まくし立てた後に…
「ところで…
姉さんの姿が見当たらないようだけど、いつもの旅行かい?」
と、言葉を続けた。
「まあね…。ふわぁ」
私は、大きく伸びをしながら答えた。
妻の恵美子が三ヶ月に一度、友達と温泉旅行に行っている事は義雄も知っている事である。
「でもさぁ。
姉さんが旅行中だからと言っても、ちゃんと家のベッドで寝なきゃダメだぜ!」
義雄が、引き続き『お小言』を口にした。
「はいはい…」
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