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「ところで…」 と、ここで義雄の顔が少し、ほころんだ。 「久しぶりに元気そうな兄貴の顔が見れて良かったよ。 たまには、電話してくれよ。兄貴なら大歓迎だぜ。俺も、できるだけ電話するからさ」 と、彼はそこで片手で小指と親指を立ててそれを耳に当てるジェスチャーをした。 あ…。 と、その仕草を見た私は、内心でこう思った。 これは… 『エア・テレフォン』ってヤツだな……(笑) 今や、これだけ携帯電話が普及した時代…。 今、義雄がした『エア・テレフォン』は、本来、固定電話の受話器を表現したジェスチャーなのだろうが… 見ようによっては、『エア・携帯電話』にも見えない事もないなぁ…。 と、私がそんな事をぼんやりと考えていると… 「じゃあ… 俺は明日、昼から仕事有るんで帰るわ。兄貴もベッドで、とっとと寝ろよ」 義雄が帰って行った。 「義雄のヤツ…明日の土曜日も仕事なのか…。大変だなぁ…。 さて。私もちゃんとベッドで寝るとするか」 と、一人残った私は、ノロノロと立ち上がった。 のだが… 「全然…眠くない…」 さっき、残業中に会社の応接室で寝てしまい… 更に今まで家の居間で一眠りしていた私は… 全く眠くなかった。 そういう事なら… 引き続き、深夜番組を見ようかとも考えたが…。 「うーん…。 あ!そうだ!いつも使ってる睡眠薬でも飲んで寝るとしよう!」 と、思い立ち隣の書斎へと向かった。 書斎に入り、机の横の棚を見ると… 普段から愛用している胃薬の瓶などに混ざって睡眠薬の瓶が置いてあった。 日頃から私は、会社の昼休みや今日みたいに残業途中に爆睡してしまい、いざ夜にベッドに入っても、なかなか眠れない時がたまに有る。 だから、そういう時の為に書斎に睡眠薬を常備していたのだ。 しかも、この睡眠薬… 少量で相当に眠くなる強烈なヤツだ。 一晩寝るのに必要な容量は、把握している。 私は、その瓶から白い錠剤を数個、掌に落とすと一気に水無しで飲み込んだ。 「よし!寝るとするか!」 私は、寝室に行ってパジャマに着替えると、ベッドに潜り込んだ。
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