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「ようこそ少年!!人生の墓場へ!!」
「…………………は?」
全ての家具が黒で統一された部屋に居た少年は目の前の男の一言に呆然とした。
(人生の墓場………?いやいや俺は結婚した覚えは無いぞ。それにこの部屋は俺の部屋じゃないな…。確か今日はバイトが終わって家に帰って………あれ?思い出せない」
「うん、混乱するよね。とりあえずそこのソファーに座りなよ。そんで俺の話聞いてくれない?」
そう言う男は先にソファーに座っているが。
「んん。では改めて少年、弥城拓真。君はバイトの帰り中に飲酒運転をしている車に引かれて死亡、人としての生を終えた。そして今、転生の儀を受けようとしている」
拓真は男の発言に絶句する。自分がこうして存在して居るのは生きているからでは無いのか?そんな疑問が浮かぶが、猛スピードで自分目掛けて突っ込んでくる車を思い出した。そこで自分が死んだのだと、何故か納得できた。
「俺は………死んだんだな」
「そう、残念な事に死んでしまった。けどそう悲観する事は無い。君は転生するチャンスを得た」
男は歓迎するように両腕を広げた。心底面白いと言うようにニタニタと笑みを浮かべて。
「転生?それはアニメやゲームや小説とかであるやつか?」
「話が早くて助かる」
「そんなに詳しくは知らないがな」
拓真は今まで生きてきてそう言う世界に足を踏み入れた事がなかった。何せ極貧生活をして金を稼ぐためにバイト三昧。高校の推薦で大学に入学。大学の民族学を専攻していて、そこで出来た友人や先輩に誘われアニメを見たり漫画や小説を貸してもらっていたのだ。
「転生についての説明をしよう。最近、神々の間で抽選で当たった人間を異世界に転生させようってのが流行っていてね。その転生させた人間の人生ドラマを見て娯楽にしているのさ」
何だそれは。説明を聞いた彼の心境は複雑だった。神は人間を、自らの娯楽の道具としているのかと。目の前の男も神では無いのかと。ならばこの神は自分を転生させ娯楽の道具にしようとしているのではないか。
「貴方も神なのか?」
「そうだ。神とは言っても神にも様々だ。よくアニメやゲームに出てくる正しくて綺麗な神じゃない。俺は所謂、悪神なのさ。悪神だけでなく、邪神であり魔神だ。命が持つ殺意、悪意、憎悪、憤怒、嫌悪、慟哭、恐怖を愛し。虚偽、絶望、魔性、混沌、狂気、災厄、深淵を司る神なんだぜ俺」
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