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「ようこそいらっしゃいました!我が社は『欲望も願望も全部引っ括めて、お客様のご依頼にお答えする』がモットーでございます。本日のご依頼は?誘拐?殺人?何でも言ってください。お客様のご依頼に答えるため、人員から物資、何でも惜しみません。」
まるでオペラ歌手のように喋る男性。
漆黒の髪に深紅の瞳。
二十代前半と若く見える。
「…………噂で聞いた。ここに依頼すると何でもしてくれると」
「えぇ、勿論です。お客様のご依頼には100%満足していただきたい。お仕事の手助けから“お片付け”まで。全て私どもが負担します」
そう言うと男は部屋の隅にある棚からティーセットを取り出すとお茶を淹れ始めた。
「私とした事が……お客様にお茶の一つも出さないなんて……失礼いたしました。どうぞお掛けください。それとまだ名乗っていませんでした。私の名は【奈落】どうぞお見知りおきを…。」
奈落……依頼人の男はそう呟くとソファーに座った。
「今回の依頼は復讐だ。その依頼を手伝ってもらいたい。」
「ほう!復讐ですか。対象は?」
「大貴族マーミット家の一家全員。そこで雇われている私兵および使用人。」
「承りました。では復讐決行の日時と合流場所は?」
「今日から三日後。黄昏時に王城より北にある廃教会に。復讐が終わった後はすぐさま解散。後日またここに来よう」
奈落はこと細かくメモしていく。
「承知しました。それではこちらで相応しい人員を選出しておきます。」
「……本当にやってくれるんだな」
「勿論ですとも。お客様の復讐が完璧になるように、私共は全力を注ぎます。」
「……ありがとう。では当日頼む。」
男は立ち上がり部屋を出ていこうとする。
「一つお聞きしても?」
ドアに手をかけた所で奈落が問い掛けた。
「なんだ?」
「何故復讐を?」
「………言わねばならないか?それとも仕事に関係あることか?」
「えぇありますとも!私共はお客様の欲望願望から来るご依頼を大事にしております。今回の場合ですと、お客様に何があったのか。何故復讐しようと思ったのか、復讐せずにはいられなくなったのか。何故?何故?。とても気になります」
奈落はこの世のモノとは思えぬ、邪悪な笑みを浮かべる。
「………………それがこの仕事をしている訳か?」
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