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マーミット家の従者達はいざという時の為に鍛えられているが、それでも戦闘のプロには敵わない。
最初こそ侵入者であった奈落と依頼人を排除しようと集団戦法で襲い掛かったが、依頼人の力により全員が物言わぬ亡骸と化した。
とうとう依頼人はマーミット家当主の部屋まで来た。もはや彼に残されている感情は憎悪のみ。そしてこれから行うのは復讐。それは合理的な考えをする者から見れば意味のない事かもしれない。そんな事をしても、死んだ人は帰ってこないのだから。しかし、人は感情があるから人であれる。人には生物としての本能があり欲望がある。人には人であろうとする理性があり感情がある。ただ本能のままに、欲望の赴くままに行動しては獣と同じ。
ここで依頼人の姿を見てみよう。
ただ憎悪に身を任せ、殺意によりあらゆる命を簒奪した。その心は狂気へと染まりきっている。
目は血走っており、身体中はここへ来るまでに殺してきた者達の返り血で染まっている。手には一振りの剣。持ち手の部分の色が変わるほど握り締め、刃はボロボロで刀身全体に血がべっとりと付着していた。これではもう人は斬れないだろう。
「お客様。剣が使えなければ魔法で。魔力が尽きれば拳で、手で。手が潰れれば足で。足が無理なら歯で。どんなやり方でも復讐を遂げる。その覚悟でしょう?」
「シューシュー……殺す……マーミット家は皆殺しだ……殺す……殺す殺す!殺すぅぅぅぅ!!!!」
依頼人はもはや獣である。狂気に溺れ、憎悪と殺意のみが、彼を動かしている。
扉を壊し、中へ突撃する依頼人。
中からは女性の絶叫と男性の苦しむ声。
「き、貴様ァ!な、何をしている!恩を忘れたか!?」
「殺す……コロス!!」
「や、やめギャッ!」
奈落はその声を聞くと笑を浮かべながら二度頷き、中へと入っていった。
中に入ると当主らしき男性がボロボロの剣で頭をかち割られたのか、頭に入ってる“色んな”モノを撒き散らして死んでいた。
依頼人の方を見ると肩と腹から血を流しながら、必死に命乞いをする女性が居た。
「あああ痛い痛い痛いわ……ねぇお願い助けて!確かに貴方を“騙した”のは悪かったわ!お願い助けて!私は今でも貴方の事をあい」
そこまで喋って女性の頭部に真っ赤な花が咲いた。
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