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「マーミット家は謎の襲撃者達によって一家全員と全ての使用人が殺害された。襲撃者達はマーミット家にあった金品を強奪。ギルドが駆け付けた時には屋敷は全焼。生き残りはいない」
それだけ言うと奈落はポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつけ吸い始めた。
ふぅーーっと、煙を吐き出すとイライラした口調で喋りだした。
「あーー。つまんねぇ依頼だったなー」
そんな奈落を見て今も結界を張っている少年が聞く。
「………ねぇ。結局、あのおじさんは何で復讐したの?」
「んー?それ聞いちゃう?つまらないよ?ありきたりだよ?良いの?」
「いい、知りたい」
奈落は焼け続けている屋敷を眺めながら語りだす。
「あのおじさんはな、マーミット家当主の奥さんの不倫相手だったんだよ━━━━」
正確には、マーミット家婦人がマーミット家婦人になる前から依頼人と付き合っていた。互いに結婚を目前にしていたが、マーミット家当主(以後豚)が権力と金で婦人を自分のものにした。当然それに怒った依頼人はマーミット家に抗議した。しかしマーミット家は依頼人の抗議を知らぬ存ぜぬで突き通した。困った依頼人は裁判所に訴え出たが、豚の権力で裁判官を買収。裁判を有利なものにした。さらに依頼人にとっては最悪な事だが、婦人が完全に豚(の権力と財力)に堕とされていたのだ。愛する婦人にも裏切られ、貴方なんか知らない!!私が愛しているのはこの人(豚)よ!!(裏声)と言われた依頼人は意気消沈……………かと思われていたが、可愛さ余って憎さ百倍とはよく言ったもの。己の愛しい恋人を奪ったマーミット家は勿論の事、自分を裏切った恋人への憎悪が日に日に大きくなっていった。しかし相手は腐っても大貴族。真っ向から挑んでも自分一人では容易く潰されてしまう。そこで依頼人が聞いたのは、依頼すれば何でもしてくれる店があると。もはや表の奴等に頼めないなら、裏の奴等を使えば良い。
「━━━━そうしておじさんは俺達の店に来たってわけ」
話終わる頃にはタバコを吸い終わっていた。吸い殻を魔法で消して奈落は二人に向き合って
「んじゃ帰ろっか。報酬分はいただいたし、あ、結界はもう解いて良いよ」
「ん、わかった」
少年が軽く腕を振るとマーミット家の屋敷を囲んでいた結界が解かれていく。
「カハハハハハ、やはり依頼がつまらなければ、相手もつまらなぬか」
鬼は退屈そうに呟く。
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