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「いや、あんまけしかけない方が」
「そうそう。治療されるのは俺らだぜ? 死ぬなら俺らだ」
包丁ツインテールと妖怪石油まみれに止められて、俺はそれ以上の言葉は飲み込んだ。
ちょっと格好いい言葉を言ってみたかっただけであまり意味はなかったし。
けれど、医者は違った。
医者は俺達を見ると、腰を下ろし手を両方前へ出した。
「こい、一本こい」
――全部、受け止めてやる。
輝いている目はそう言っている。
が、俺たちは動いたら死ぬ。
それぐらい医者が見抜けないとは。
絶対コイツでは無理だ。
「すまん、森湖山。警察を呼んでくれないか」
「え、でもっ」
「死体未満の俺たちには、まだ時間があるからな」
決め顔で言うが、すでに電話をかけられていた。何が『え、でもっ』だ。躊躇する理由は全くない。
俺達が目を覚ますと包丁が刺さっていた理由を伝えなければいけない。
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