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「なんだよ、あの噂」
そういわれて、おもわず肩を竦めた。
下校時間の校門。
さすがに噂が回るのも早いらしい。
「もう知ってるんだ?」
「当たり前。いっておくけど学校中の噂だぞ?」
祐一郎は呆れたようにため息を吐いた。
「どんな噂になってる?」
「んー、まあ、いろいろあるけどな。真人が校門で女に抱きつかれたって。あれはきっと真人の女だとか、 真人のストーカーだとか・・・・酷い話だと、その女は号泣してて、赤ちゃんができた云々の話をしていたとかなんとか・・・・」
「そりゃ酷いね」
「アホ、笑いごとじゃないっつーの」
コツン、と額を小突かれて、小さく肩を竦めた。
祐一郎は相変わらず呆れ顔で、盛大にため息を吐いて見せた。
「悟の話だと、おまえ、そこにいたんだろ?」
「まあね」
「なんで、真人いかせたんだよ?」
「なんでって?」
「止めれるだろ、おまえなら」
そういって、祐一郎が真っ直ぐに自分を見据えた。
祐一郎のいいたいことはわかる。
それでも・・・・。
「俺が止めることじゃないだろ」
「え?」
いつになく真剣な面持ちの祐一郎の眉が、ぴくりと動いた。
軽く息を吐いて、窓の外を眺める。
空は曇り。
灰色の雲は、どんよりと、すべてを覆っている。
「いくかいかないかは、真人の意志だろ。俺がとやかくいうことじゃない」
「そうだけど・・・・でも、」
「祐一郎」
なにかをいいかけた祐一郎の言葉を遮って、顔を上げた。
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