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「次の土曜、ヒマか?」
週の始めの月曜日。
学食にいった祐一郎と、さっさと昼食を食べ終えてグラウンドに飛び出していった悟のおかげで、 珍しく二人きりの昼食。
少し肌寒さも残る屋上で、パンを片手に真人が口を開いた。
「土曜?」
「ああ」
「ヒマだけど・・・・どうかした?」
休日に真人と会うことはべつに珍しくもないけれど、いつもは当日になってからどちらかが電話をして会うパターンが多いから、 いちいち前もって約束をすることはほとんどない。
おもわず首を傾げると、真人はパンを頬張りながら、ポケットから紙切れを取り出した。
細長い封筒に入ったそれを受け取り、中身を確認して、さらに首を傾げた。
「『TIC』?三丁目にあるライブハウス?」
「さすが。よく知ってたな」
「いったことはないけどね。あそこらじゃ一番有名なライブハウスだろ」
「まあな。今度そこで、いろんなバンド集まって結構でかいライブやるらしくてよ。それが土曜ね」
そういって、真人は智紘の手元を指差した。
もう一度チケットを眺めると、土曜日の日づけと、開演時間が記されている。
「兄貴がもらってきたんだけど、あんまり興味ないらしくてよ。まあ、売ればいい金にはなるけどな」
「ああ、ここのライブって結構レベル高いって訊いたことあるよ。マニアには数倍の値で取引されるって?」
「そ。売ってもいいんだけど、どうせならこの機会に、いってみるのもいいかなと思ってな。興味ないか?」
「いや、『TIC』には興味あるよ。真人と同感」
そういって、チケットを翳すと、真人は小さく笑った。
「そういえば、ここって真人がいってた店のすぐ近くじゃない?」
チケットを返しがてら呟くと、真人は苦笑を洩らした。
「ああ、一本裏通りだな」
「ひさびさにいきたくならない?」
そう微笑むと、真人は笑いながらチケットをポケットに押し込んだ。
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