憂鬱パズル

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「ならねえよ」  はっきりと呟いて、真人は智紘の腕を引っ張る。  なんとなく予想していた行動に、笑みを零し、真人の肩口に頬を寄せた。 「おまえは?」  覗きこまれるように問いかけられて、やっぱり笑みが零れた。 「ならない。もう必要ないだろ?」  満足気に笑った真人が、智紘の額にそっと唇を落とす。  眼を伏せて、それを受け止める。  静かに流れる、そんなしあわせ。  ゆっくりと眼を開けて、すぐ側にあるフェンスに手をかけた。 「悟がいる」  グラウンドでクラスメイトとサッカーボールを追い回す悟の姿。  豆粒くらいの大きさでしかわからないけど、それでも一番、元気よく走り回っているその姿は、一目瞭然だ。 「あそこから見えると思う?」 「さあな。まあ、アイツの視力は野生児並だから、見ようと思えば見えるかもな」  クツクツと肩を揺らして、真人がもう一度、唇を落とす。 「あんなとこから誰もいるはずがない屋上を眺めるヤツなんていねえよ」 「いたとしたら?」 「関係ねえな」  真人らしいセリフに、智紘は笑いながら、その黒髪に手をかけた。  それを合図に、唇がゆっくりと重なる。  外の肌寒さと同様に、真人の唇も、微かに冷たかった。
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