憂鬱パズル

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「ねー、真人、今日の夕飯なに?」 「あー?決めてねえよ」 「俺ね、オムライス食べたい」 「そいや、サンマがあったな」 「決めてないっていったじゃーん!」  ぎゃあぎゃあと騒ぐ悟を無視して、真人はさっさと靴を履き替え、玄関の外へと出てしまう。 「あー!もう、置いてくなってば!」  あとを追うように走っていく悟に続いて、下校中の生徒で賑わう玄関をすり抜けた。  そろそろ十一月だというのに、今年は少しあたたかい。  それでも、吹き抜ける風はもう冬の風だ。 「祐一郎いるかな?」  少し背伸びをして、悟はグラウンドの隣にあるテニスコートに眼をやった。 「いや、今日はグラウンド整備だっていってたから、屋内だと思うよ」 「そうなんだー、残念」  今日は体育館でバレーボールの日、とうれしそうにいっていたテニス部の祐一郎を思い出し、小さく苦笑を洩らした。  悟は歩きながら、空を見上げて、深い息を吐いた。  まだ白くはないけれど、それでも、確実に冬は近づいている。  少しずつ、少しずつ、雪の足音が近づいてくる。 「今日さ、昼休みサッカーやったんだけど、十一月に入ったらできなくなるかな?」  つまんないよね、と不安そうに呟く悟に、笑いながら、何気なく空を見上げた。  空はまだまだ秋の色。  それでも確実に見え隠れする冬の色。 「そうだね、寒くなるよ?きっと」 「んー、でも、まだまだいけると思うんだよね。みんなは来月になったらバスケに切り替えるっていうんだけど」 「そりゃね、風邪引くといけないし」 「そうかなぁ?まだ大丈夫だと思うけど」 「ま、おまえに風邪は無縁だわな」 「なんだと!?俺だって風邪くらい引くぞ!」 「おまえが風邪引くのは夏だろ、夏。ほら、夏風邪はナントカが引くって」 「煩い煩い!バカ真人!」  真人はにやりと笑いながら、悟の攻撃をやんわりとかわす。  いつもどおりの光景を笑いながら眺めていると、真人が悟の頭を押さえつけながら、身を屈めた。
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