58人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・あのさー、真人」
自分と同じように、突然の出来事をただ呆然と眺めていた悟が、おずおずと口を挟んだ。
「俺たち、先に帰ろうか?」
ね?と、同意を求められて、おもわずちらりと真人に視線を向けた。
眼があった真人は、なにもいわずに、自分を見つめている。
下校途中の生徒たちが、何事かと、物珍しげな視線を送る。
その状況に、小さく息を吐いて、悟に向けて軽く頷いた。
「智紘」
顔を上げると、真人はなにかいいた気な表情でこちらを見ている。
なにがいいたいかなんてわからない。
だから、微笑んで、そっと手を差し伸べた。
「俺たちのことは気にしなくていいから、いっていいよ」
ごゆっくり、とばかりに、その手をひらりと揺らすと、真人が僅かに眉を寄せたのが見えた。
すぐに絡みつく腕と、それを振り解こうともしない真人に背を向けて、悟に促されるまま反対方向へ足を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!