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「うん。ちょっと挫いただけ」
「ごめんね、叶多」
「ううん。あたしが勝手に――」
「そうじゃなくて」
高飛車な声は鳴りを潜め、里佳はどこか投げやりにつぶやいて不自然なくらい黙りこんだ。
待ってみたけれど、里佳が口を開く様子はなく、叶多はおどけて首を傾けた。
「ケガしたら戒斗が動くなって云って、ホントに犬みたいに首輪をされそうになったよ。
今日、やっと出られた。
あのあと大学では大丈夫だった?
里佳がバラさなくて助かった。
だって、あたしは里佳みたいにやれそうにないから。
今度、戒斗から護身術を習うことにしたの。
体力ないから倒しちゃうなんていうのは無理だけど、手を振り解いたり逃げる時間を稼いだりする方法があるんだって」
「叶多、あたし、ずっといろんなこと後悔してた」
里佳は唐突に叶多が喋るのを制した。
「里佳……」
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