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「里佳、戒斗のこと――」
「そういうことじゃなくて、叶多が幸せそうだから。あたしがいなくてもちゃんとやってきたんだ、ってさみしくてうらやましくて。あたしはずっと意地張ってきて、叶多には負けてる。それをやっぱり認めたくなくてまた意地悪した。成長してないよね」
里佳は顔をうつむけて呆れたように笑った。
それは里佳自身に向けているに違いなく。
「あたしは強くないし、里佳に勝ってるとも思ってない。かわいそうだとかも思わない。ねぇ里佳、あたし、いつかまた里佳に会えたら、避けられても絶対に云いたいって思ってたことあるんだよ」
「何?」
「里佳、大好きだよ。ずっと大好きだよ」
そうやっと伝えられた瞬間、見せてくれた里佳の笑顔はずっと昔の笑顔と同じだった。
きっといま、あたしも小学生みたいな顔で笑っている。
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