303人が本棚に入れています
本棚に追加
「おまえのおかげだ」
戒斗が云うと、言葉に詰まった気配が感じられる。
暗さに慣れた目が孔明の怪訝な表情を捉えた。
「おまえ、じゃなくて『孔明さん』じゃないんですか」
「いつまでも丁寧にやってどうする。別に仕事で付き合ってるわけじゃない」
戒斗が云いきると、孔明は奇妙な面持ちになったのち、ひとしきり笑った。
「なんとなく叶には何かしてやりたくなったんだよな。なんでだろう」
お邪魔虫はまた一匹増えた。
幸いにも新米虫は自分の気持ちに鈍感らしい。
いや、幸い、とは限らないのか。
戒斗は顔をしかめた。
最初のコメントを投稿しよう!