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夏生家は代々貴刀家に仕えていて、戦後の苦境も陰になりながら共に寄り添っていた。
密接な信頼関係があり、それを裏付けるように夏生家は貴刀家の敷地内にある。
同じ建物内に住んでもいいんじゃないかというほど貴刀の邸宅は大きいが、それでは家族間の会話でも気を遣うだろうと別に設けられている。
そんな配慮を惜しみなくできる主だからこそ、さっきの会話に表れているように夏生家は何を置いても貴刀家なのだ。
邸宅の正面エントランスまで来ると、チャコールグレーの車がちょうど入ってきた。
外灯に照らされて、満遍(マンベン)なく塗装されたメタリックがきらきらと反射している。
エントランスから出てきた父、智也が目に入ったのと同時に車は止まり、運転席のドアが開いた。
結礼が来たことにいち早く気づいたらしく、ドライバーは後ろを振り向いた。
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