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「哲ちゃん!」
「よお」
すっかりスーツ姿が板についた哲(テツ)こと織志維哲(オリシイサト)は、姫良の長年の友人であり、姫良の夫、紘斗の仕事上のパートナー兼友人だ。
紘斗は貴刀グループの後継者として期待されていて、つまり、哲と貴刀家は親しい間柄だ。
哲とはじめて会ったのは、姫良と紘斗がここで内々の結婚式を挙げた七年前のことだ。
顔立ちはいいのにどことなく強面で、けれど軽く顎をしゃくるしぐさはざっくばらんで、気取らない挨拶はまったく変わらない。
「わざわざすまないね」
智也が哲に呼びかける。
「いいえ、ちょうど仕事帰りです。こんな時間だ、姫良には依頼した責任があります。おれに頼むのがいちばん安全だって知ってますから」
「そこは私も信用してるよ。愛車をぶっ壊したくはないだろうからね」
智也が揶揄すると、哲は可笑しそうに笑い声を立てた。
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