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「健朗さま、結礼です」
云ってみたものの、結礼の声は小さすぎて聞こえなかったのか、うんともすんとも返事が来ない。
「あの……憶えてませんか? 夏生家の……」
ためらいがちに云ってみると、反応したのは背後で吹きだした哲だ。
『記憶力は明らかにおまえよりもおれが上だ』
いつもの素っ気ない云い方にほっとするのは、結礼の感覚がおかしいのだろうか。
「あの! 部屋に伺ってもいいですか。お料理持ってきました」
へんな自信が出て、結礼は押しきってみた。
ため息が聞こえたかと思うと。
『キー、解除した』
返事のあとはぷつりと通話は途絶えた。
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