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哲から受けとったバスケットを持ち直すと、さらにマンションのなかに入ってエレベーターに乗った。
十五階まであっという間に上昇してしまう。
健朗の部屋の前に立つと、会いたい気持ちと引き返したい気持ちがせめぎ合う。
引き返したいという気持ちも、結局は会いたい気持ちの裏返しにすぎない。
もう来ていることは伝わっているのだから逃れようがないのだ。
結礼はそう自分に云い聞かせた。
ドアチャイムを鳴らそうと手を伸ばしかけたとき、なかから不意打ちでドアが開けられた。
びっくりした結礼と違い、健朗は至って冷静そうに――もしくは怪訝そうに結礼をひととおり眺めると顔をしかめた。
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