825人が本棚に入れています
本棚に追加
結礼にしろ、産まれたときから貴刀家は第二の家のように慣れ親しんだ場所だ。
それなのに、自分には似合わないと思う。
貴刀家とともにあり、長年仕えてきた夏生家としての身の程が遺伝子レベルで染みついているのかもしれない。
主人の帰りを待つ犬のようにしばらく待ってみても、姫良が続きを喋る様子はない。
結礼は再び首をかしげた。
「姫良お姉ちゃん?」
すると、姫良はわずかにテーブルに身を乗りだす。
「健朗がいなくなって清々(セイセイ)した?」
傍にだれがいるわけでもないのに、ひそひそ話をするように姫良は声を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!