#壱

7/10
前へ
/38ページ
次へ
屋上でフェンスにもたれかかりながら 慣れた手つきで煙草に火を点けた。 息を吸い込み、鼻から息を吐き出す と、同時に俺の鼻から煙草の煙も一緒に吐きでる。 青い空をぼんやり眺めながら 俺はまた煙草を蒸した。 「今から煙草吸うと長生き出来ないよ」 俺しかいないと思っていた屋上に 俺以外の声が聞こえた。 「......」 「先輩の言うことは正しいんだからな!!」 どこから現れたのかそいつは俺の正面に立つと 吸っていた煙草を取り上げた。 「おまっ、何して!」 俺がそういうとそいつは笑顔で 「君が死んだら悲しむ人いるだろ?」って 言ってきた。 悲しむ奴なんか俺にはいない。そう言い返そうとしたら そいつは俺の顔を覗き込んで 「俺は悲しい。...」なんて吐かしやがった。 悲しいってなんだよ。意味わかんねぇ... 会ったばかりの奴にそんな事...、 そいつの顔を見たらそいつは今朝怒鳴りつけた 先輩だった。 今朝の事もあって俺はそいつから目を伏せた。 するとそいつが...、先輩がズボンのポケットに手を入れ ガサガサし始めた。 「あった」って掛け声と共に先輩の手から 俺の手に何かが渡った。 おそるおそる開けてみるとそこには 棒つきの飴が一つのっていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加