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まだ少し温もりが残っている布団の中で、女は男から受け取ったカレンダーの1枚を見つめてみる。
“もしかして、彼氏との記念日とかだった?”
頭の中に蘇ったその問いに、
「彼氏なんて、いないわ」
さっき飲み込んだ言葉を吐き出す。
独り言ちた言葉は静かな部屋の中に響き、また沈黙に溶けていった。
幾度も幾度も、この部屋で溶けていったその言葉だが、それが男に届くことは無い。
何故なら、それは二人の関係を終わらせる言葉でしかないから。
二十時過ぎにやって来て、二十一時前には去って行く、その一時間にも満たない時間は、熱っぽくて濃厚で、酷く脆い。
だから、男は知らない。
女がまるで掌中の珠か何かのように抱きしめるカレンダーのその日付が、二人が初めて関係を結んだ日のものであるということ。
十二月二十二日
イブの前々日。クリスマスの三日前。
一年前のこの日、二人は初めて抱き合った。
欲望のままに快楽を求め、身体を繋げた。
女はこの関係を、一夜限りだと思った。
いや、もっと正確に言うならば、一夜限りにすべきだと思ったのだ。
男と女は、本来、結ばれてはならない関係なのだから。
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