明日、あなたは来ない

4/7
前へ
/7ページ
次へ
まだ少し温もりが残っている布団の中で、女は男から受け取ったカレンダーの1枚を見つめてみる。 “もしかして、彼氏との記念日とかだった?” 頭の中に蘇ったその問いに、 「彼氏なんて、いないわ」 さっき飲み込んだ言葉を吐き出す。 独り言ちた言葉は静かな部屋の中に響き、また沈黙に溶けていった。 幾度も幾度も、この部屋で溶けていったその言葉だが、それが男に届くことは無い。 何故なら、それは二人の関係を終わらせる言葉でしかないから。 二十時過ぎにやって来て、二十一時前には去って行く、その一時間にも満たない時間は、熱っぽくて濃厚で、酷く脆い。 だから、男は知らない。 女がまるで掌中の珠か何かのように抱きしめるカレンダーのその日付が、二人が初めて関係を結んだ日のものであるということ。 十二月二十二日 イブの前々日。クリスマスの三日前。 一年前のこの日、二人は初めて抱き合った。 欲望のままに快楽を求め、身体を繋げた。 女はこの関係を、一夜限りだと思った。 いや、もっと正確に言うならば、一夜限りにすべきだと思ったのだ。 男と女は、本来、結ばれてはならない関係なのだから。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加