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ニライカナイ周辺は海底火山が吹き荒れる危険な海となり、ソットマリーナをもってしても再び近づくことは難しくなった。
クラーケンとの戦いによって車体整備もしなくてはならないこともあり、ソットマリーナはム―へと向かっている。
俺は偵察した時に見たことを海列長に報告するべく1号車のブリッジへやってきた。
ブリッジを見渡すと、通信オペレーターのクシハダのシートだけがポカリと空いている。
そして、海列長に俺は偵察でどんな事が起きたのかを細かく説明した。
全ての報告を聞いた海列長は小さく頷く。
「つまりネレイドの奴らは超古代文明の神殿で何かをやっていた。そして、トラップを踏んだのか、何かの機械を暴走させてしまったということか?」
「やっていたことは何か、よく分からなかったのですが……」
海車長は頷いた。
「ありがとう、カイト。任務ご苦労だった。ゆっくり休め」
左の手首を右手でつかんで前へ差し出し、覚えたばかりの敬礼をしてから後ろへ下がろうとした時、俺は頭に浮かんだ一つのことを海列長へ伝えておこうと考えた。
「……これは勘なのですが」
「勘?」
「ネレイドは神殿で、何かスイッチを入れたのではないでしょうか?」
「スイッチ?」
海列長が珍しく首を後ろへ回した。
「えぇ、ネレイドらはニライカナイで失敗したのではなく、『何かのスイッチを入れることに成功した』のではないかと俺は感じたんです。あれは機械が暴走して吹き飛んだのではなく、作業が成功した結果なのではないかと思うのです」
海列長は帽子を深く被りなおして腕を組む。
「我々でもよく分からない部分のある超古代文明だ。それくらいのことはあるかもしれんな」
「まぁ……単に俺の勘で言っているだけなのですが……」
すると、海列長はほんの少し微笑んだ。
「いや勘は大事だ。どんなにデータを集めても、最終的には経験からくる勘で判断しなくてはいけないのだからな。カイト、興味深い考察をありがとう。少しそういう方向でも考えるようにしてみよう」
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