07.キッカとの旅

2/7
184人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
 ニライカナイ周辺は海底火山が吹き荒れる危険な海となり、ソットマリーナをもってしても再び近づくことは難しくなった。  クラーケンとの戦いによって車体整備もしなくてはならないこともあり、ソットマリーナはム―へと向かっている。  俺は偵察した時に見たことを海列長に報告するべく1号車のブリッジへやってきた。  ブリッジを見渡すと、通信オペレーターのクシハダのシートだけがポカリと空いている。  そして、海列長に俺は偵察でどんな事が起きたのかを細かく説明した。  全ての報告を聞いた海列長は小さく頷く。 「つまりネレイドの奴らは超古代文明の神殿で何かをやっていた。そして、トラップを踏んだのか、何かの機械を暴走させてしまったということか?」 「やっていたことは何か、よく分からなかったのですが……」  海車長は頷いた。 「ありがとう、カイト。任務ご苦労だった。ゆっくり休め」  左の手首を右手でつかんで前へ差し出し、覚えたばかりの敬礼をしてから後ろへ下がろうとした時、俺は頭に浮かんだ一つのことを海列長へ伝えておこうと考えた。 「……これは勘なのですが」 「勘?」 「ネレイドは神殿で、何かスイッチを入れたのではないでしょうか?」 「スイッチ?」  海列長が珍しく首を後ろへ回した。 「えぇ、ネレイドらはニライカナイで失敗したのではなく、『何かのスイッチを入れることに成功した』のではないかと俺は感じたんです。あれは機械が暴走して吹き飛んだのではなく、作業が成功した結果なのではないかと思うのです」  海列長は帽子を深く被りなおして腕を組む。 「我々でもよく分からない部分のある超古代文明だ。それくらいのことはあるかもしれんな」 「まぁ……単に俺の勘で言っているだけなのですが……」  すると、海列長はほんの少し微笑んだ。 「いや勘は大事だ。どんなにデータを集めても、最終的には経験からくる勘で判断しなくてはいけないのだからな。カイト、興味深い考察をありがとう。少しそういう方向でも考えるようにしてみよう」
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!