01.光る海

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 船の異常な動きに反応してスピーカーからは警報が鳴り響く。  ブリッジで当直していた仲間達は、何が起きたか分からないだろう。  爆発によって船の周囲の海面には台風の時のような高波が発生し、船は前後左右に大きく翻弄された。アミューズメントパークにある海賊船型の絶叫マシーンのように大きく持ちあがった船首が海へ落ち、船尾は狂ったように、尋常ではない速さで跳ね上がる。  シーソーのように激しく揺さぶられれば、船上にあった全ての物体は跳ね飛ばされる。  縛ってあった物資さえもあっさりロープを切って海へ向って飛び出していく。  無論、海へとほうり出される物体には俺も含まれる。  いくら手すりにしがみついていようとも、あっという間に俺は甲板から漆黒の海面へ向けて放物線を描いて放り出された。  その力に抗することも、逃げ出すことも叶わない。  俺に出来たことは、「うはっ!!」と、間抜けな声を上げることだけだった。  数秒間だけ重力から逃れて宙を舞った俺は、至極単純な物理法則に従って海面へと叩きつけられる。派手な音が響き、俺を中心にミルククラウンのような大きな水飛沫が上がった。  俺は胸を抑えながら「痛っ!!」と顔をしかめる。  四十メートルの高さから水に飛び込めば、水面の硬さはコンクリートと同じになり、人は全身骨折を免れないと言われる。俺は海面に接触した瞬間、大きな衝撃を受けた。  鼻にツーンと血の臭いが混じり、腹の底からジーンと傷みが伝わってくる。  内臓を痛めたのか……。  この状況では自分の身体を確認することは難しいが、今まで生きてきた中で最も危険な状況に陥っていることは直感していた。  そして、覆いかぶさるような大波がやってきて俺の直上で崩れる。  咽には海水が大量に入り込み、それだけで呼吸が圧迫されて胸が苦しい。  不思議なことだが海水を飲み込むと、人は「死ぬかもしれない」という恐怖にかられる。  焦れば焦るほど酸素は必要になるがムダな動きと呼吸で、肺は半分死んでしまっているのではないかと思うくらい空気を取り込めない。  酸素欠乏は脳の判断にも影響し、瞬時に何をすべきかを迷わせる。  そうだ、溺れなければ何とかなる!
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