829人が本棚に入れています
本棚に追加
「葉瑠ちゃんの顔が見たいんだけどな」
…だめ。だめよ。
楢崎くんのペースに流されちゃだめ。
「葉瑠ちゃんが可愛すぎていじめたくなるんだよ」
振り向いちゃだめ。
意地から抜け出せず、膝に顎を突いたまま無言を貫くと、不意に彼の声が聞こえなくなった。
音のない時間がバスルームに充満して、次第に不安が押し寄せる。
…どうしよう。
ちょっとムキになりすぎたのかもしれない。
口を閉ざしてしまった彼のことが気になって、おそるおそる後ろを振り返ると、
「やっとこっち見た」
彼は待っていたかのように、フッと口角を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!