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彼は片手を伸ばすと、お湯でふやけた私の手を弄ぶように触れた。
「小さな手だな」
優しい声が耳元に降ってくる。
「大丈夫? のぼせてない?」
男らしさを感じる大きな手は、いわゆる節くれ立ってはおらず、すんなりと伸びた綺麗な指をしていた。
「……うん」
先ほどまで彼のおちょくりに頬を膨らませていた事実が、嘘のように消えていく。
心地よさにぼうっとしていると、不意に彼が指使いを止めて言葉を選ぶように尋ねてきた。
「…あのさ、神谷センター長にはこの前、結婚するって報告したんだよな?」
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